Artist Interview
佐野魁 Kai Sano
愛知県立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻 卒業
東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程 修了
主な展覧会
2017「Crossing Factors」EFAG
2019「トーキョー・ストリート・ビュー」RED AND BLUE GALLERY
2020「TOKYO MIDTOWN AWARD 2020」東京ミッドタウン
2021「Street Museum 2021」東京ミッドタウン
受賞
2017 愛知県立芸術大学卒業制作展 桑原賞
2020 TOKYO MIDTOWN AWARD 2020優秀賞
出演
2020 ブレイク前夜〜次世代の芸術家たち〜BSフジ
作品リンク:http://kaisano.com
脆く儚いからこそ、
大切にしたいもの。
テレビの向こうで3.11が起きたのは、佐野が高校2年生のときだった。
街ごと津波に呑み込まれる恐ろしい風景を、茫然と見ているしかなかった。とりわけ、普段は人々を守ってくれている「家」が一瞬で失われる。その光景は、ショッキングだった
10年後。パンデミックにより、世界中の「家」は、そこにあるにも関わらず、不安を孕んだ存在へと変容した。我々の一番の拠り所であるはずの「家」。居心地のいい空間だったはずのそれが、コロナ禍で長時間過ごしすぎることにより、窮屈さ、閉塞感、家庭内感染など、見えない不安が漂う、ときにストレスフルな場所へと変貌している。仲が深まった家族もいれば、真逆になってしまった家族もいる。人々を守るはずの「家」まで、ウィルスに侵されてしまったのか。
そんなことを感じた佐野が、自宅のさまざまな場所を、さまざまな時間に描いて生まれたのが『A moment 』シリーズだ。「描くことにより、当たり前に過ごしていたその場所が持つ意味や質に自覚的になる」と彼は言う。光の変化を感じながら見つめる、洗面台、風呂、トイレ、蛇口、コンセント…。誰にとっても身近な部屋の一角たちが、近代の都市の土台とも言えるコンクリートを躯体に、木炭で丁寧に描き出されていく。モチーフの身近さとは裏腹に、強固な素材にヒビが入った画面、木炭という強く触れれば消えてしまう儚い素材のコントラストが、見るものに違和感や、日常が一瞬で崩れていく脆さ、存在の曖昧さを想起させる。
しかし、だからこそ。見つめれば見つめるほど、この場所のこの瞬間が、とても大切にしたい、愛おしいものにも見えてくる。作品の奥底に流れる繊細で優しい眼差しもまた、このシリーズの魅力なのかもしれない。
Why art - アーティストを志したきっかけ-
– 佐野:父が画家なんです。小さな頃から父が絵を描く姿を見て育ち、また、その姿が好きでした。
「夕飯できたから、お父さん呼んできて」と母に言われ、父のアトリエに行く。すると、油絵のオイルの匂いがする。筆一本で白いキャンバスに向き合う様、まだ絵具がついてないキャンバスに筆が擦れる音。幼い頃から五感で感じていたその様子が、僕の原風景になっているのかもしれません。
小さな頃から何か作っているのが好きで、粘土や立体の制作が得意だったのもあり、自然と美大の彫刻科へ。在学中に現代アートにのめり込み、今があります。
実は、大学卒業後も制作を続けていくか迷った時期もありました。そんなとき「やりたいこと、やったらいいじゃない」と言ってくれたのも、父でした。シンプルですが、何よりも僕の背中を押してくれた言葉でしたね。自分に嘘をつかずに、自分のものの見方や感じたことを表現し、追求していく。僕はその考え方が好きだし、そうありたい。父が絵を描く姿はスタンスを体現しているから、今でも心に残っています。
Why Visions Palette - ビジョンズパレットの魅力 -
– 佐野:子供たちが、美術を通して自分のことが好きになってくれる。それを肌で感じられるのがいいですよね。最初は「何をつくったらいいかわからない」「これが正解なのかな?」と不安がっていた生徒さんが、制作を通して、自分を表現することを知り、作品への愛着が生まれ、それが自分の自信になっていく。不安がっていたのが嘘のように、気づいたら「俺の絵、ヤベェな!」と自信満々に自分の絵を褒めている子もいたりして(笑)あと、お子さんの色彩感覚が魅力的です。葉っぱが黄色、バラが水色など、既存の色彩感覚にとらわれない表現が面白いですよね。「この色って、他の子は使わないけど私好きだな」「僕の使いたい色は、これだから!」っていうのが、たくさんあっていいんですよ。僕、大竹伸朗さんの『スクラップブック』シリーズが好きなんです。廃材やゴミと呼ばれるものに美を見つけ、人が見てないものを見ている視点がかっこいいと感じて。 Visions Paletteでも、生徒さんそれぞれの“美”を一緒に発見する毎日。美術を通してこころの教養を身につけながら、自分を探す、感じる。その成長する姿に、いつも刺激をもらっています。
Message -作家からのメッセージ -
– 佐野:『A moment』シリーズは、家のさまざまな場所を描いた作品です。自覚的に描くことを通して「この場所にはこんな意味なあったのか」「朝のこの時間帯、ここはこんなにキレイだったんだ」と、身近な空間の中で改めて気づくことも多くありました。ぜひ「わたしの家どんな感じだっけ?」と改めて、身近な空間を見つめ直すきっかけになったら嬉しいです。
また、みなさん家の中には、気に入ったインテリアや家具を居心地のいいように置かれていると思います。そんな意識で、美術作品も部屋の一部として飾ってもらえたら幸いです。
Sano's Art work
作品をご購入いただけます。ご質問やご購入希望はお名前、作品名を明記の上、
visionspalette@prdx.co.jpにご連絡ください。
¥115,000(税抜)
¥115,000(税抜)
A moment (wash stand)
¥115,000(税抜)
H900×W495×D40(㎜)
コロナ禍を経て生まれた『A moment 』シリーズ。私たちを守る存在のはずの「家」。とりわけプライベートな空間を、近代都市の象徴であるコンクリートを躯体に、ヒビが入った画面、木炭という儚い素材のコントラストの中で、独自の視点で描き出していく。
「Wash stand」は、家の中でも異質な存在だ。「独立洗面台」などというネーミングから、まるで家の中でも、独立国家であるような。場であるはずなのに、洗面台だけが独立独歩する「モノ」として扱われているようだ。異質な存在が所有する戸棚には、歯ブラシや洗顔料など、なぜか住人の素顔を知るプライベートなものが並べられている。独立した存在でありながら、1日のはじまりを共にするという住人と密着した役割を担っていることもまた、興味深い。
送料別途:1780円(目安)*お届け先により変動
*作品の発送は1月中旬以降の予定です。
*こちらの作品は別webサイトで3Dデータでも販売されています。所有権は当webサイトで販売しております実作品にのみ生じますが、念のためご了承くださいませ。
¥105,000(税抜)
¥105,000(税抜)
A moment(toilet)
¥105,000(税抜)
H885×W380×D40 (㎜)
コロナ禍を経て生まれた『A moment 』シリーズ。私たちを守る存在のはずの「家」。とりわけプライベートな空間を、近代都市の象徴であるコンクリートを躯体に、ヒビが入った画面、木炭という儚い素材のコントラストの中で、独自の視点で描き出していく。
トイレは、家の中でも数少ない、本当に1人になれる空間かもしれない。狭く、しかしどことなく落ち着く、シェルターのような感覚。リビングにいる時よりも、考え事がよく進むという人もいる。秘密の花園の扉が開き、秘め事を覗き込んでしまったような一瞬を切り取る。
送料別途:1780円(目安)*お届け先により変動いたします。
*作品の発送1月中旬以降の予定です。
*こちらの作品は別webサイトで3Dデータでも販売されています。所有権は当webサイトで販売しております実作品にのみ生じますが、念のためご了承くださいませ。
¥90,000(税抜)
¥90,000(税抜)
A moment(bath)
¥90,000(税抜)
H693×W327×D45(㎜)
コロナ禍を経て生まれた『A moment 』シリーズ。私たちを守る存在のはずの「家」。とりわけプライベートな空間を、近代都市の象徴であるコンクリートを躯体に、ヒビが入った画面、木炭という儚い素材のコントラストの中で、独自の視点で描き出していく。
住人が最も無防備な姿で自分で過ごすのが「風呂」なのかもしれない。「水が流れる場所」という意味合いが強いイメージだ。1日で積もったいろいろな想いが流せたり、あるいは、流れてしまったり。良くも悪くも、リセットされる場所。空っぽの風呂場は、こちらが覗いても素知らぬ顔である。
送料別途:1780円(目安)*お届け先により変動いたします。
*作品の発送1月中旬以降の予定です。
¥50,000(税抜)
¥50,000(税抜)
Faucet and Switch
¥50,000(税抜)
H350×W250×D25(mm)
洗濯機置き場に配置されていた、スイッチと蛇口。
コンセントを挿せば電気が走る。蛇口をひねれば水が出る。オンかオフか。1か0か。偶然並んだ2つのオブジェクトは、さまざまな表象に見立てることができる。
送料別途:940円(目安)*お届け先により変動いたします。
*作品の発送1月中旬以降の予定です。